「小さな恋のメロディ」に《もう一つのラストシーン》が?
ファイル#15 曲名: River Boat
作詞,作曲:Martin Jenkins / Kevin Dempsey /
Roger Bullen / Dave Cooper / Ted Kay
ダンドゥ・シャフト に収録
昨年12月にソニーミュージックから『プログレッシヴ・ロック紙ジャケット・コレクション ブリティッシュ・ロック編』として9作品がCDで発売されたが、その中に英国プログレッシヴ・トラッド・フォークを代表するバンドとして知られるダンドゥ・シャフトの2作目も含まれていた。一般の洋楽ファンには馴染みの薄いこの作品が紙ジャケット仕様で選ばれたのは、キーフの秀逸なアートワークによる見開きジャケットが視覚的にも優れているためであろう。壊れて放置された回転木馬が、朽ちた建物の隙間から差し込む斜陽を浴びて、今にも息を吹き返し動き出そうとしているかのようなビジュアルが至極神秘的に映る。

ソニーの宣伝文では、ダンドゥ・シャフトを英国プログレッシヴ・トラッド・フォークを代表するバンドとして紹介してはいるが、実際のところ英国トラッドは1曲もなく、全曲がメンバーのオリジナルである。マーティン・ジェンキンスの弾くマンドリンやフィドルの音色をバックに、冷たい空気を突っ切って疾走するような軽快さをもつ『Kalyope Driver』『Coming Home to Me』『Railway』といった曲は、英国の荒涼とした冬の大地を想起させる。そして、“春近し冬の早朝、草木生い茂る土手のそばの川をボートが寂しく流れゆく”様子を、その時の自分の抱えていた想いとともに、このアルバムから参加したポリー・ボルトンが、可憐でのびやかな歌声で歌う『River Boat』。アルバムのハイライトと言ってもいいだろう。

「ダンドゥ・シャフト」がイギリスで発表された1971年に一本の青春映画が公開された。「小さな恋のメロディ」である。純粋無垢な11才の少年少女が紡ぎだす淡い恋愛を描いた作品であるが、本国イギリス、アメリカではほとんど無視された。反面、日本では大ヒットを記録し、主役二人(ダニエル役のマーク・レスターとメロディ役のトレイシー・ハイド)の人気はすさまじく、当時の映画雑誌に頻繫に取り上げられていた。
「小さな恋のメロディ」は、劇中使用されている曲⦅ビージーズやCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)⦆が素晴らしいのは勿論、歌詞の内容やメロディーとそれが流れる場面とが、あまりにもピッタリコンとシンクロしあっている。音楽と映像が美しく重なり合って、その場面がイメージ・ビデオのように脳裏に焼き付いてしまう。
最近の映画にはDVD化された際に、《削除されたシーン》とか《もう一つのラストシーン》とかの特典映像が入っているものがある。もし「小さな恋のメロディ」にも《もう一つのラストシーン》が存在すると勝手に想像してみると…《クライマックス!学校から抜け出したダニエルとメロディーを連れ戻しに来た親や先生達。それを仲間が妨害してくれている隙に、ダニエルとメロディーは親友トムが川岸に用意してあったボートに乗りこむ。最初二人の笑顔を捉えたカメラは、ゆっくりと上空へ。そしてボートは川下へ海へ向かって進んでいく。最後にカメラはボートが見えなくなった大海原を映し出す。その真ん中に小さな孤島がひとつ浮かんでいる。どこか遠くにある、別れのない愛があるという島が》そしてこのラストシーンのバックにはCSN&Yの「Teach Your Children」ではなく、ダンドゥ・シャフトの『River Boat』が優しく暖かく流れている。
追伸: 映画『卒業 4Kデジタル修復版』と『小さな恋のメロディ デジタルリマスター版』が、6月7日から東京・角川シネマ有楽町ほか全国でリバイバル上映される。とのことです。