秋に響くウェディングソング……Evergreen

ファイル#9 曲名: Evergreen
作詞,作曲:The Wishing Tree (Rothery/Helmer/Stobart)
カーニヴァル・オブ・ソウルズ に収録

秋も深まり冬が近くなれば、Evergreenという曲を聴きたくなる。ただEvergreenには同名異曲が少なからず存在する。有名なのは、1976年公開のアメリカ映画『スター誕生 (A Star Is Born)』でバーバラ・ストライサンドが作曲(作詞はポール・ウィリアムズ)し歌った  Evergreen(Love Theme-A Star Is Born-)であろう。映画自体は三度目のリメイク版であり、前二作が映画業界の物語であったものを音楽業界の物語に変更している。バーバラ自身も出演し、作品賞を含む5部門でゴールデン・グローブ賞を、さらにはアカデミー賞歌曲賞、グラミー賞最優秀楽曲賞も受賞している。
<映画のあらすじ>場末のクラブで歌うエスター(バーバラ)と人気ロック歌手のジョン(クリス・クリストファーソン)が偶然に出合い激しい恋に落ち、ジョンの愛と尽力によりエスターはスターダムへのし上がる。だが、エスターの成功とは対照的にジョンの人気は下落するばかり。自分の存在がエスターの足枷になると思い悩むジョンは、ある日フェラーリを走らせた。ジョン事故死!数日後の彼の追悼コンサートの日にエスターは彼との思い出の曲Evergreenを歌います。天国にいるジョンに聴いてもらおうと……。

バーバラ・ストライサンドのEvergreenも素晴らしい曲であるが、ここで紹介するEvergreenはThe Wishing Tree というグループの演奏するものである。The Wishing Tree は、Marillion(80年以降ネオ・プログレッシブ・ロックの代表格として活動を続けているグループ)のギタリストであるスティーヴ・ロザリーが1996年に結成したユニットである。Pink Floydのギタリストであるデイヴィッド・ギルモアが才女ケイト・ブッシュを見出したのに感化されたのか、スティーヴ・ロザリーはハンナ・ストバートというこれまた美貌のフィメール・ヴォーカリストを見つけ出した。このハンナ嬢は スティーヴィー・ニックスの声を幼くしたようなコケティッシュな声質をもち、それは“英国の深い森に住む妖精の声”と言っても過言ではない。なんとこの時彼女は学生で音楽に関しても全くの素人であったというのも更に驚きだ。才能あるギタリストは、才能あるフィメールに巡り合えるようになっているのだろうか?

森の中の妖精は “愛はいつまでも色あせることはないのかしら…春が冬に変わっても…”と嘆いております。そこで森の精霊が彼女にささやきかけます。“愛は不朽(Evergreen)であり、想い出は決して消えはしない”と…。ハンナ嬢のヴォーカルとスティーヴ・ロザリーの奏でるエレキギターの音色が絡み合って、それはまるで妖精と森の精霊との会話であるかのように聴こえます。Evergreenは妖精や魔女、魔法使いと共存しうる英国だからこそ生まれた幻想的な曲だといえましょう。もし、結婚式のウェディングソングのセレクトに悩んでおられる洋楽好きのカップルがいましたら、この名曲を強く推します。秋の枯葉を躍らせるエレキギターの響きと愁いを秘めた妖精のつぶやきが、必ずや英国の幻想的な空間へ誘ってくれることでしょう。

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